Case Study
「システムを導入したい」の裏にある
「組織拡大に耐える仕組み」の不在を解決する
数十名規模、Excel属人管理の限界——。デジタイゼーション→デジタライゼーション→DXの段階的変革ロードマップを設計。
※本事例は進行中のプロジェクトです
数十名規模の中堅企業から、「人事評価をシステム化したい」というご相談をいただきました。Excelで管理している評価シートの関数が壊れる、格納漏れが起きる、給与反映の手動転記にミスが出る——。日々の業務に追われる担当者の悲鳴でした。
しかし私たちは、その依頼をそのまま受けませんでした。ヒアリングを重ねる中で見えてきたのは、単なるIT化の課題ではなく、「組織が100名、150名に拡大した時、管理コストが線形に増え続ける構造になっている」という、より根深い問題でした。
複数のシステムが非連携で二重入力が発生し、経営判断に必要なデータが即座に出せない。「人を増やして対応する」以外の選択肢がない状態。私たちは「システムを入れる」ではなく、「デジタイゼーション→デジタライゼーション→DXの3段階で、組織を構造的に変革する」というロードマップを提案しました。
| クライアント業種 | 中堅企業(数十名規模・組織拡大フェーズ) |
|---|---|
| 課題領域 | 人事労務管理(評価・給与・異動・勤怠) |
| 支援内容 | 業務ヒアリング(30業務) / DXロードマップ設計 / 人事評価システム構築 / 段階的な業務自動化 |
| プロジェクト期間 | 14ヶ月(3フェーズ構成) |
| 特記 | Phase 1 進行中(デジタライゼーション段階) |
The Request
クライアントからの相談内容
クライアントからいただいた相談は、以下の3点でした。
人事評価のシステム化
Excelで管理している人事評価を、クラウドシステムに移行したい
手作業ミスの解消
関数破損・転記ミスによる給与計算エラーをなくしたい
担当者の負荷軽減
評価時期に集中する膨大な事務工数を減らしたい
一見すると「人事システムの導入支援」の案件です。そのまま受ければ、ツール選定・初期設定・データ移行という「普通のIT化支援」になります。
The Real Challenge
私たちが見抜いた、本当の課題
ヒアリングを重ねる中で、「システムを入れたい」という言葉の裏にある、より根本的な問題が見えてきました。
組織拡大に対応できる業務体制を作りたい
1. 業務の属人化——約70名分の評価をExcelで管理しているのは特定の担当者だけ。関数の仕組み、格納ルール、給与反映の手順がすべてその人の頭の中にある。退職・休職した瞬間に業務が停止するリスクを抱えていました。
2. システム非連携——人事評価はExcel、給与計算は別システム、目標管理はスプレッドシート、勤怠は別の仕組み。データが散在し、二重入力が常態化。「正しいデータ」がどこにあるのかすら曖昧な状態でした。
3. データ基盤の未整備——経営判断に必要な人件費分布・スキル構成・評価傾向といったデータが即座に出せない。「感覚」で判断するしかなく、組織が拡大するほどその判断精度は下がっていく構造でした。
「システムを入れる」だけでは、目の前の非効率を1つ解消するにすぎません。組織が100名、150名に拡大した時、また同じ問題が別の形で発生する。「IT化」ではなく「DX」——ビジネスモデルと組織構造自体を変革する視点で設計し直す必要がありました。
What is DX?
「IT化」と「DX」は、まったく違う
DXは一足飛びに実現するものではありません。3つの段階を経て、組織は段階的に変革されます。それぞれの段階には明確な違いがあり、順序を飛ばすことはできません。
Stage 1
デジタイゼーション
アナログ情報をデジタル化する段階。紙の書類やExcelファイルをシステムに置き換え、情報を電子的に保存・管理する。
例: 紙の評価シート → Excel管理
Stage 2 — 現在地
デジタライゼーション
業務プロセスのデジタル化。データが流れ、自動化される段階。ワークフローが電子化され、手動の転記や確認が不要になる。
例: Excel → クラウドシステムで評価フロー電子化
Stage 3
DX
ビジネスモデル・組織構造自体を変革する段階。蓄積されたデータをAIで分析し、経営判断そのものを変える。
例: AIによる最適配置・離職予測
| IT化(電子化) | DX(変革) | |
|---|---|---|
| 目的 | 既存業務の効率化 | ビジネスモデル・組織の変革 |
| アプローチ | 紙→デジタルに置き換え | データ活用で新しい価値を創出 |
| 効果 | 工数削減・ミス削減 | 売上向上・意思決定の質的変化 |
| 人事での例 | Excel → システムで管理 | AIが最適配置を提案・離職を予測 |
| 変わるもの | ツール・手段 | 組織のあり方・経営判断の方法 |
IT化の限界——業務を「速くする」ことはできるが、「変える」ことはできない。100名、150名と組織が拡大した場合、IT化だけでは対応に限界がある。DXは、データを活用して経営判断を根本から変えること。「人を増やして対応」ではなく「仕組みで解決」する組織への変革を目指しています。
Our Approach
「システム導入」ではなく
「3段階の組織変革」を設計した
私たちの提案は、ツール導入から始めるものではありませんでした。まず30の業務プロセスを徹底ヒアリングし、「どの業務が最もボトルネックで、どこから手をつければ最大の効果が出るか」を特定することから始めました。
同時に、DXには3つの段階——デジタイゼーション(アナログの電子化)→ デジタライゼーション(業務プロセスの電子化)→ DX(組織構造の変革)——があることを共有し、14ヶ月のロードマップを設計しました。
DX推進アーキテクチャ
01
Phase 1: まず「痛み」を止める——評価業務の電子化
最も属人化が激しく、ミスの影響が大きい「人事評価→給与反映」のフローを最優先で電子化しました。約70名分の評価シートをクラウドシステムに移行し、承認フロー(一次→二次→人事→最終承認)をワークフロー化。給与システムとの連携を構築し、手動転記をゼロにする。Phase 1だけで年間283時間・約142万円の工数削減を見込んでいます。
Phase 1: 業務別改善効果
| 業務名 | 現状工数 | 改善後 | 削減時間 | 削減率 |
|---|---|---|---|---|
| 人事評価実施 | 160h/年 | 30h/年 | 130h | 81% |
| 評価結果反映 | 80h/年 | 15h/年 | 65h | 81% |
| 昇給に伴う給与変更 | 80h/年 | 20h/年 | 60h | 75% |
| 昇格に伴う給与変更 | 40h/年 | 12h/年 | 28h | 70% |
| Phase 1 合計 | 360h/年 | 77h/年 | 283h | 79% |
02
Phase 2: システムを「つなげる」——データ統合と自動化
Phase 1で構築した評価基盤を核に、異動・昇格・入退社手続きの自動化を進めます。バラバラだったシステムをAPI連携で統合し、二重入力を根絶する。入退社時のチェックリストをシステム化し、手続き漏れ・連絡漏れのリスクをゼロにします。Phase 1+2の累計で年間580時間・約290万円の削減効果を見込んでいます。
03
Phase 3: 「仕組みで経営する」——データドリブンな意思決定
蓄積されたデータを活用し、経営ダッシュボードを構築します。人件費分布・スキル構成・評価傾向をリアルタイムで可視化し、「感覚」ではなく「データ」で経営判断ができる状態を作る。将来的にはAIによる離職予測・人材最適配置まで視野に入れています。全フェーズ完了時、年間730時間・約365万円の削減効果と、管理コスト53%削減を試算しています。
目指すシステム全体構成
現状: システムがバラバラ
データ分散 / 二重入力 / 連携なし
目指す姿: クラウドシステム中核
人事評価 / 目標管理 / 異動管理 / 人事台帳
API連携
API連携
Phase 3
The Results
この戦略が実現すること
本プロジェクトは提案段階であり、以下の数値はすべて試算(シミュレーション)です。14ヶ月のロードマップを通じて、人事労務部門を「管理部門」から「経営戦略の中核」へと転換する構造的変化を目指します。
年間削減効果(試算)
730h
約365万円/年(試算)
投資回収期間
9ヶ月
2年目に黒字転換
5年間 ROI(試算)
131%
保守シナリオでの試算値
| フェーズ | 削減工数 | 主な効果 |
|---|---|---|
| Phase 1(進行中) | 283h/年 | 評価フロー電子化 / 転記ミスゼロ / 属人化解消 |
| Phase 2 | +297h/年 | システム統合 / 二重入力根絶 / 手続き自動化 |
| Phase 3 | +150h/年 | 経営ダッシュボード / 離職予測 / AI配置最適化 |
| 合計 | 730h/年 | 約365万円/年の効果 / 投資回収9ヶ月 |
Phase 1で得られる6つの価値
クラウドシステム導入は単なる時間削減にとどまりません。情報の可視化・リスク回避・組織拡大への備えという戦略的な価値を生み出します。
確度: 高
業務工数削減
手作業の80%以上を自動化し、年間283時間の工数を削減。
確度: 高
エラー防止
関数破損・転記ミス・格納漏れを構造的にゼロにする。
確度: 中
属人化解消
特定担当者に依存しない、誰でも運用できる標準化された業務フロー。
戦略的価値
データ分析基盤
適正配置・離職予兆分析が可能に。データに基づく経営判断の基盤。
戦略的価値
人材構成の可視化
年齢構成の達成度をリアルタイム把握。高齢化リスクを予防。
戦略的価値
スケーラビリティ
70名→100名→150名の拡大に、人事工数の増加なしで対応する基盤。
現状維持のリスク(年間)
310万円超
5年間で最大1,600万円以上の損失
導入効果(年間・保守)
約300万円
5年間で+800万円超の価値創出
損害カテゴリ別 年間リスク分析
現状維持によるリスクを6カテゴリに分解。非効率な業務工数が最大の損害要因。
5年間 累計キャッシュフロー推移
保守シナリオ(効率化率50%)で2年目に黒字転換。5年間ROI: 131%
人員拡大 vs 管理工数シミュレーション
従来方式(Excel)では人員倍増で管理工数が2倍以上に。DX実現後は150名でも+20%に抑制。
Expected Structural Change
年間730時間の業務工数削減(試算)
手作業の80%以上を自動化する計画
転記ミス・関数破損ゼロ
給与トラブル・法令違反リスクの排除
属人化リスクの完全解消
誰でも運用できる標準化された業務フロー
Strategic Impact
150名規模でも管理コスト+0名
「人を増やして対応」から「仕組みで解決」へ
データドリブンな経営判断
人件費・スキル・評価をリアルタイム可視化
5年間ROI 131%(試算)
投資回収16ヶ月、5年間純効果+800万円超(保守シナリオ試算)
DX Vision
DXが実現する、4つの未来
デジタライゼーションからDXが完成した時、人事労務部門は「管理部門」から「経営戦略の中核」に変わります。
それぞれのビジョンが実現した状態を、具体的にイメージしてみてください。
Vision 01 — Real-time
リアルタイム経営判断
部署別人員構成・スキル分布・人件費がリアルタイムで把握可能。経営会議でのデータ待ちがゼロになり、「今この瞬間の組織状態」を常に把握できます。
HR Dashboard Preview
Total Staff
70名
Avg Age
34.2歳
Turnover Risk
3名
Dept Labor Cost
Age Distribution (3:7)
Revenue Impact
人件費最適化によるコスト構造改善
Efficiency
意思決定スピード
Cost Reduction
レポート作成工数
Vision 02 — Predictive
予測型人事
離職リスクの早期検知、採用需要の予測、繁忙期の人員計画。「起きてから対応」ではなく「起きる前に対策」する組織へ変革します。
Predictive Analytics Flow
勤怠データ
遅刻・欠勤・残業
評価データ
推移・満足度
組織データ
異動・在籍期間
離職予測モデル
機械学習による多変量分析
社員A(開発部・3年目)
残業増加 + 評価低下 + 在籍3年
社員B(営業部・5年目)
有給未取得 + 異動希望あり
社員C(企画部・2年目)
評価上昇 + エンゲージメント高
Revenue Impact
離職コスト(1名あたり年収の50%)の回避
Efficiency
離職率の改善
Cost Reduction
採用コスト
Vision 03 — Optimization
人材配置の最適化
スキル × 経験 × 志向のマッチングで、プロジェクト成功率と社員満足度を同時に向上。「誰が何に向いているか」を定量的に判断できるようになります。
AI Skill Matching Flow
社員データ
スキル・経験・志向
プロジェクト要件
必要スキル・期間
AIマッチングエンジン
適合度スコアリング + レコメンド
最適配置案
Top 3を提示
育成ギャップ
必要スキルを表示
Revenue Impact
プロジェクト成功率の向上
Efficiency
配置決定に要する期間
Cost Reduction
育成コスト
Vision 04 — Scalable
スケーラブルな組織
70名→100名→150名と組織が拡大しても、人事労務の工数が比例増加しない仕組み。人員を増やさずに対応できる、持続可能な管理体制を構築します。
Scale Simulation: Staff Growth vs Admin Cost
Revenue Impact
人事増員不要による人件費抑制
Efficiency
150名対応時の必要追加人員
Cost Reduction
従来比で管理コスト
Key Insights
AsetZが大切にしている姿勢
01
「IT化」と「DX」を混同しない
Excelをクラウドシステムに置き替えても、それは「IT化(デジタイゼーション)」に過ぎません。業務プロセスを電子化する「デジタライゼーション」、そしてデータを活用して組織を変革する「DX」——この3段階を正しく理解し、現在地を把握した上でロードマップを描くことが重要です。「DXしたい」という漠然としたゴールを、具体的な段階に分解して提示する。それが私たちの最初の仕事です。
02
「痛み」から始めて、「構造」を変える
最も効果が高く、最も痛みが大きいところから着手する。それがPhase 1の設計思想です。「全部を一気にやる」のではなく、まず評価→給与の転記ミスという「今日の痛み」を止め、その成功体験を基盤に次のフェーズへ進む。小さな成功を積み重ねることで、組織全体の変革に対するモチベーションが生まれます。DXは一足飛びには実現しませんが、正しい順序で進めれば必ず到達できます。
03
「出口のある投資」を設計する
14ヶ月の全体像を描きながらも、各フェーズで効果を検証し、ROI基準で継続・変更・撤退を判断できるようにしました。Phase 1だけで投資対効果195%。仮にPhase 2以降に進まなくても、Phase 1単体で十分に元が取れる設計です。「やめられない大型投資」ではなく「各段階で成果が出る段階的投資」。クライアントが安心して踏み出せる構造を作ること——それも、私たちが提供する価値の一つです。
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